AMERICA

PANAMA

世界が高品質な豆に注目。

パナマと言えば、文書、運河、そして超高級コーヒー「ゲイシャ」の名産地。

エチオピアで生まれ、コスタリカの研究所に渡り、中米でも栽培されていたがサビ病で絶滅。忘れ去られていた「ゲイシャ種」だがパナマのボケテ地区のドンパチ農園がコスタリカの研究所より持ち帰って復活。そして近くのエスメラルダ農園が国際品評会でそれをよりアピール。その衝撃のテイストがきっかけで、パナマはコーヒーの産地としても世界的な注目を浴びる存在に躍り出た。

ボルカンバルーの麓、ボケテ地区、その周辺ではゲイシャのみならず他にも高品質な豆を作っている。ウオッシュド、ナチュラル、ハニー。多くの精製法のノウハウもあり、現在最も世界、特に高品質な豆を求める人々から愛されるブランド産地の一つとなっている。

COLOMBIA

苛烈な環境が他にない魅力と多様性を産む、世界第三位のコーヒー王国。

赤道直下の地域では収穫期が2回、スペインから独立した19世紀にコーヒーの栽培を始め、今では世界中に輸出し、生産量は世界3位(2017年データ)、世界的にも大きな影響力を持つ産地。

何かと比較される、同じくコーヒー大国ブラジルとは大きな違いが3つある。伝統的な精製方法はウオッシュド、手摘み、そして高地で栽培するエリアが多い。南部では2000メートル超えの馬でしかいけないところも。

そのため、寒暖差が激しい高地の中部や南部の豆には酸味が特に際立つものが多く、スッキリで、キレがあると評される。反面ブラジルは甘みがあり、苦みも強いため、コクがあると評されることが多い。これらの対象的な2つをベースにブレンドするコーヒー店も多く、世界のコーヒー文化をけん引する両輪ともいえる。

主な産地は高地で有名な南部のナリーニョ、火山灰等による肥沃な土壌が特徴の中部のウィラ、比較的低地でマイルドな味が特徴の北部はサンタンデール、シエラネバダなど。地域による多様性もバラエティ豊か。火山灰が降り注ぎ、寒暖差の激しい苛烈な環境が特別な香り、目の覚める様な味わいを生みだす。

PERU

美食の国の進化するコーヒー。

ペルーといえば、旧インカ帝国、マチュピチュ、ナスカの地上絵、セビーチェ。エキゾチックなその魅力から「いつか行きたい」と言いながらも、そのあまりの遠さにいつか行きたいが実現することはあまりない。

そんな遠いイメージのペルーも、じゃがいも、トマト、唐辛子、かぼちゃ、ピーナッツの原産地と聞くと、エキゾチックな謎の国から我々の日常に近い国な気がしてくる。16世紀にスペインがこの地を征服しつくした後、ヨーロッパにこれらの食材を持ち帰らなければ、トマトのないイタリア料理、ジャガイモのないドイツ料理、ひいてはキムチのない韓国料理になっていたかもしれない。そして本場ペルー料理は今や世界でも有名、ワールドトラベルアワードにて「世界で最も美食を楽しめる国」に4年連続最優秀に選出されている。

日本との関係では、明治時代に日本から移民した人も多く、ペルーの元大統領が日本の熊本県にルーツを持つ方であったことも記憶に新しい。主食が米というのも日本人には親しみが持てるところだろう。

コーヒーについては南米の二大大国ブラジル、コロンビアの陰にかくれがち。ブラジルほどの生産量はなく、コロンビアほどの凄みもなく、マイルドで飲みやすい珈琲というイメージ。しかし昨今は美食の国ならではのクリーンなカップの珈琲やオリジナリティあふれる農園が生まれ、驚くような面白い味や香りの珈琲が突如として現れ始めている。そんなサプライズが最も期待できるペルー。今後のスペシャルティコーヒーシーンで目の離せない産地のひとつであろう。

DOMONICA

カリブ海のプリンセサ。華やかな珈琲島。

ドミニカ共和国は、コロンブスが発見したエスパニョール島を隣国ハイチと分ける国、ここがスペインの最初の拠点となり、他の中南米を征服する拠点ともなった。今ではまるでアメリカのメジャーリーグの下部組織のようなイメージだが、街並みにはスペインの影響が残る。

隣国のハイチよりは随分豊かで、治安も中米では随分と良い、マシな方である。鉱物資源やカリブ海のビーチをはじめ観光資源にも恵まれ、GDPもそこそこ。しかしより上を目指してアメリカやプエルトリコに出稼ぎに行く人も多い。その出稼ぎ先からの送金で購入した車で、昨今は都市部の渋滞が多く、街は賑わいと活気があるようだ。

コーヒーの歴史は18世紀から。アラビカ種のティピカの苗木が移植されドミニカでのコーヒー栽培が開始されたと言われている。カリビアンモカ、プリンセサ等の銘柄が有名。2000メートル近い標高の山もあり栽培には向いている。同じカリブ海に浮かぶ島、ジャマイカの馬鹿高いコーヒーよりドミニカの方がずっと良い、そんな声もコーヒー通からあがる。


BRAZIL

広大な大地、機械化が支える、世界一の珈琲生産国

世界一の珈琲豆生産量を誇る国、ブラジル。世界シェアの3割、ダントツの1位、2位のヴェトナムの18%とは圧倒的な差。主な地域はサンパウロ州、ミナスジェライス州、バイーア州など。サンパウロ州セラードなどでは収穫や精製が機械化された大規模農家も多く、その数はおよそ30万。これらが世界一の生産量の安定した品質の礎をなしている。

その規格は、No.1からNo.8までの等級に分かれる。ただ、自然の農作物で欠点が全くないことはなく、その基準の厳しさからブラジルの規格に「No.1」は存在しない。「No.2」が事実上の最高ランク。スクリーンサイズは最大の20から13までに分別される。これらの基準はブラジル式と呼ばれ世界基準のひとつ。それは近年に生まれてきたもう一つの世界基準、スペシャルティコーヒー協会のCQIカッピング基準とはやや異なり、欠点が少ないのを良しとし、短所が少ないことを重んじる。反してアメリカ式のCQIでは特徴のある風味、長所が明確なことを尊ぶ。

その味わいは欠点を嫌うブラジルらしくクセが少なくコクがある。定番ともいえる。そして何より広大な大地で機械化に成功し大量に採れる。欠点が少ない高品質なもを安く入手できることが最も世界から愛される理由だろう。もちろん日本でもストレートコーヒーからブレンドコーヒーの基本ベースまで幅広く使われ、多くのファンを持つ。世界のコーヒー市場を支える王国であり、毎年のブラジルの収穫量がコーヒーの市場価格に与える影響はとてつもなく大きい。

COSTA RICA

軍隊を持たない国のコーヒー革命。

世界で唯一軍隊を持たない国として有名なコスタリカ。他の中米諸国より治安は良く、他の国とは少し違う状況はコーヒーへの携わり方にも現れる。

政府はつい先日までロブスタの栽培を法律で禁止。アラビカ種だけを栽培し、高品質なものを作ってそれを他国に輸出しようという政策を行っていた。

そして民間レベルでも近年では「マイクロミル革命」と呼ばれる、小規模農家でも「ミル」いわゆる「精製処理場」を持ち、美味しいコーヒーを追求していこうという動きが盛んになった。

他国では精製処理場をドンと構える大地主の下、小作人やピッカー(収穫する人)として働くしかない農民の方が多い。しかしそれでは結局のところ、地主だけが儲けて小作人は言われるまま作るだけ。たとえばコロンビアではピッカーという職業は最下層の様に扱われることも。

しかしここコスタリカでは「革命」の名の通り、小規模農家が美味しくするために色々工夫して、考えて、それに見合った価格もつけている。

誰しも頑張ればビジネスオーナーとなれる。軍隊の持たない国の革命。小さな農家でもその味で世界に名を知らしめることができる。最高の希望がある国のコーヒーはとても多様だ。


GUATEMALA

温暖な気候と豊かな土壌。コーヒー通の安全地帯。

好きなコーヒーの産地を問われたとき、ブラジル、コロンビアと言えば普通すぎ、イエメン、マダガスカルなどではマニアック。
そんな時、良い距離感、通な感じで言えるのが「グアテマラ」。

国そのものの認知度はそれほど高くないですが、コーヒー専門店では定番アイテム。現にグアテマラから輸出される豆の2割は日本向けであり、ブラジル・コロンビアと並び、デイリーなブレンドにもよく使われる。オーガニックのコーヒーも豊富。

豊かな火山灰土壌に標高が1000-1500メートルの土地が多く、首都のグアテマラシティですら標高1,500メートルの高原。自然、コーヒーの栽培に適した土地が多い。

古代マヤ語で「常春」の意味もあるグアテマラは一年を通じて温暖。人口の半分がマヤ系の先住民で、1770年ごろに修道士がコーヒーを持ち込んだ。そして、隣国のコスタリカがコーヒーで潤っているのを見て、1871年に初めて輸出、生産量・輸出量も大きく増やして行った。

代表的な産地は「アンティグア」「ウエウエテナンゴ」など8つ。温暖な気候と豊かな土壌が育む優しく豊かな味わい。コーヒー好き、コーヒーフリーク、コーヒー通たちの安全地帯。安定の産地だろう。